映画『種まく旅人~華蓮のかがやき~』スペシャルインタビュー 栗山千明さん

映画『種まく旅人~華蓮のかがやき~』スペシャルインタビュー 栗山千明さん

2021.3.25
栗山千明

人の命をつなぐ“食”をテーマにした人気映画シリーズの第4弾『種まく旅人~華蓮のかがやき~』が3月26日(金)から石川県先行、4月2日(金)より全国順次公開。今作では石川県・金沢市を舞台に、伝統野菜「加賀れんこん」作りの後継者問題に悩む農家と、最近話題を呼んでいる“農業女子”たちにスポットを当て、農業に携わる人々の熱い思いや葛藤を描く。シリーズ第2弾で主人公の農林水産省職員・神野恵子を演じた栗山千明が同じ役で登場。インタビューでは、加賀れんこんの魅力や金沢での撮影秘話、自身の食へのこだわりを語ってもらった。

「その場で感じたことを素直に表現することが大事」

――2015年に公開されたシリーズ第2弾『種まく旅人~くにうみの郷~』と同じキャラクター・神野恵子役で出演することが決まった時の率直な感想を教えてください。

また同じ役で出演することができるというのは、皆さんに神野恵子を受け入れていただけたからなのかなと。すごくうれしかったですし、光栄なことだなと思いました。前作は淡路島が舞台で“かいぼり”(豊かな水質を取り戻す伝統手法)という作業が大変だったんですけど、すごく毎日が充実していて楽しく撮影することができたんです。だから、今回もきっと楽しめるんじゃないかなと思いながらロケに臨みました。

――神野を演じる際に、前作からのつながりを意識した部分はありましたか?

前回の時も神野はどんなキャラクターなのか、いろいろ思いを巡らせてみたんです。でも、現場ではドキュメンタリーみたいな感覚で撮ってくださって。神野が劇中で体験することを私自身もそこで初めて経験するような感じ。もちろん決まったセリフはあるんですけど、リアクションは素に近かったかもしれません。今回も役作りをするというよりは、その場で感じたことを素直に表現することが大事なのかなと思いました。

栗山千明

――神野を演じていて共感できるところは?

食べることが好きなところです。食に対しての興味があるという点はよく似ています。神野は農林水産省の人間ですけど、肩書なんて関係なく訪れた地域の人々とすぐに打ち解けて交流の輪を広げていく。そういう飾らない人柄は素敵ですよね。

――劇中では、神野がレンコン畑に入って作業を手伝うシーンが出てきますけど、実際に体験してみていかがでしたか?

私の出身地である茨城県にもレンコン畑があって、深いから落ちたら大変だということを子どもの頃から親に言われていました。畑の中に入ったのは今回が初めてです。バラエティ番組などで出演者の方たちが足を取られて転んでいる姿を見ていたので、覚悟はしていました。ただ、私は農業初心者という立場の役だったので、上手じゃなくていいんです。レンコンを作っている農家で育った良一役の平岡(祐太)くんたちは事前に練習したりして大変そうでした。カメラや機材を持って畑の中に入るスタッフの方たちもボートのようなものを使って撮影に必要なものを運んだりして。足場が悪いから結構苦労していました。

栗山千明

――前回出演した時は玉ねぎで今回はレンコン。食に対する意識の変化はありますか?

野菜を買う時に産地を見るようになりました。淡路産の玉ねぎを見つけるとうれしくなりますし、加賀レンコンも東京で手に入るのであれば選んで食べたいと思います。

――金沢ロケで食べたレンコン料理で印象に残っているメニューは?

私の好みとしてはレンコンの味をダイレクトに感じられる“レンコンステーキ”。食感も良いし、すごくおいしかったです。

――レンコン農家を営む父の跡を継ぐか畑を売却するのか悩む銀行マンの良一(平岡祐太)と、今の生活を続けていきたい彼の婚約者・凛(大久保麻梨子)の関係も見どころの一つ。2人が下す決断についてはどんな思いがありますか?

実際にあってもおかしくない話ですよね。ただ、私自身が何も知らないからこそなのかもしれないですけど、畑仕事イコール体力仕事、男性の仕事というイメージがあまりないんです。確かにご夫婦で農業を営んでいる方たちはたくさんいらっしゃいますけど、もし奥さんが畑仕事に興味がなかったら、それはそれで地域の人たちと協力し合いながら続ける方法もあるんじゃないかなと。もちろん、好きな人には自分の仕事を理解してほしいですし、好きな人の仕事だから理解したい。いろいろな選択肢がある中でお互いに何を思い、何を感じるのか。本当に難しい選択だと思います。

栗山千明

――そんな中、神野の存在が良一と凛の人生を大きく変えることに……。

「こうなったらいいじゃない」って、なかなか言えないですよね。すごく大きな責任を負うことになるわけですから。でも、神野はそれができちゃう人。前作でも兄弟ゲンカに口をはさんでいましたよね(笑)。知り合ったら放っておけないタイプ。神野はとても真っすぐな女性だなと思います。

――最近、話題を呼んでいる“農業女子”についてはどんなイメージがありますか?

野菜をはじめ、食べ物を作るってすごくハードルが高いですよね。私も家でシソやバジルを作りたいなと思ったんですけど、上手くいきませんでした。でも、作品の中でもそうでしたけど、農業に興味がある人たちが集まって先輩たちのアドバイスを受けながら作業している姿はとても楽しそう。女性も楽しめるお仕事の一つなんじゃないかなと思います。

――女性の意見を取り入れた作業着はとてもファッショナブルです。

女性の視点がたくさん詰まっていてかわいらしいですよね。ただ、私は形から入るタイプなので“THE農業”という王道の作業着が好きです。何となく仕事ができる感じがするじゃないですか(笑)。

栗山千明

――食べることが大好きだということですが、年齢を重ねていく中で少しずつ好みが変わってきたなと感じる部分などはありますか?

辛いものが食べられるようになりました。30歳ぐらいまで全然ダメだったんです。お寿司もサビ抜きで、からしも苦手。それが、ある時に海外で辛い料理しか食べられない状況になったんです。日本料理店がないところだったので。その時に唯一食べられたのがオクラのペペロンチーノ炒めのような料理だったんです。オクラは日本で食べ慣れていたので、これだったらイケるかなと思って挑戦してみたら意外と大丈夫だったんです。もうそれしか食べるものがないという極限状態だったのがよかったのかもしれません(笑)。それから、辛い物も平気になりました。

――ちなみに好きな食べ物は?

私はしょっぱい食べ物が好きで、子どもの頃から塩辛やからすみを食べていました。

――仕事を頑張った自分のための“ご褒美ご飯”では何を食べたいですか?

貝が好きなので、つぶ貝やサザエ。コリコリ系の貝をお刺身で食べたいです。

――お寿司も貝類のネタが一番好きなんですか?

お寿司になるとまた別(笑)。アジや鯛の昆布じめがいいですね。

――では、最後にメッセージをお願いします。

映画を見て金沢に行ってみたい、レンコンを食べてみたいと思ってもらえたら、金沢の方々にご協力いただいた恩返しになるのかなと。農業が抱えている問題や食べ物を作るという仕事の面白さ、さまざまな人間関係などがきちんと描かれているストーリーも楽しんで見ていただけたらと思います。

――ありがとうございました!

映画『種まく旅人~華蓮のかがやき~』
3月26日(金)石川県先行公開、4月2日(金)全国順次公開
種まく旅人

©2020 KSCエンターテイメント

あらすじ
大阪の銀行マン・良一(平岡祐太)のもとに、故郷の金沢でれんこん農家を営む父の竹市(綿引勝彦)が倒れたと連絡が入る。畑は良一が継がなければ存続が厳しい上に、銀行からも融資の返済を迫られていた。良一は跡継ぎを決意するが、恋人の凛(大久保麻梨子)は猛反発。そんな中、農林水産省の恵子(栗山千明)がれんこん農家の視察で金沢を訪れる。
出演者
栗山千明、平岡祐太、大久保麻梨子、木村祐一(特別出演)、永島敏行、綿引勝彦
吉野由志子、柴やすよ、駒木根隆介、小久保寿人、平山祐介
監督
井上昌典
脚本
森脇京子
配給
ニチホランド
配給協力
トリプルアップ
©2020 KSCエンターテイメント

撮影:島村緑/取材・文:小池貴之

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