人の命をつなぐ“食”をテーマにした人気映画シリーズの第4弾『種まく旅人~華蓮のかがやき~』が3月26日(金)から石川県先行、4月2日(金)より全国順次公開。今作では石川県・金沢市を舞台に、伝統野菜「加賀れんこん」作りの後継者問題に悩む農家と、最近話題を呼んでいる“農業女子”たちにスポットを当て、農業に携わる人々の熱い思いや葛藤を描く。シリーズ第2弾で主人公の農林水産省職員・神野恵子を演じた栗山千明が同じ役で登場。インタビューでは、加賀れんこんの魅力や金沢での撮影秘話、自身の食へのこだわりを語ってもらった。
「その場で感じたことを素直に表現することが大事」
また同じ役で出演することができるというのは、皆さんに神野恵子を受け入れていただけたからなのかなと。すごくうれしかったですし、光栄なことだなと思いました。前作は淡路島が舞台で“かいぼり”(豊かな水質を取り戻す伝統手法)という作業が大変だったんですけど、すごく毎日が充実していて楽しく撮影することができたんです。だから、今回もきっと楽しめるんじゃないかなと思いながらロケに臨みました。
前回の時も神野はどんなキャラクターなのか、いろいろ思いを巡らせてみたんです。でも、現場ではドキュメンタリーみたいな感覚で撮ってくださって。神野が劇中で体験することを私自身もそこで初めて経験するような感じ。もちろん決まったセリフはあるんですけど、リアクションは素に近かったかもしれません。今回も役作りをするというよりは、その場で感じたことを素直に表現することが大事なのかなと思いました。
食べることが好きなところです。食に対しての興味があるという点はよく似ています。神野は農林水産省の人間ですけど、肩書なんて関係なく訪れた地域の人々とすぐに打ち解けて交流の輪を広げていく。そういう飾らない人柄は素敵ですよね。
私の出身地である茨城県にもレンコン畑があって、深いから落ちたら大変だということを子どもの頃から親に言われていました。畑の中に入ったのは今回が初めてです。バラエティ番組などで出演者の方たちが足を取られて転んでいる姿を見ていたので、覚悟はしていました。ただ、私は農業初心者という立場の役だったので、上手じゃなくていいんです。レンコンを作っている農家で育った良一役の平岡(祐太)くんたちは事前に練習したりして大変そうでした。カメラや機材を持って畑の中に入るスタッフの方たちもボートのようなものを使って撮影に必要なものを運んだりして。足場が悪いから結構苦労していました。
野菜を買う時に産地を見るようになりました。淡路産の玉ねぎを見つけるとうれしくなりますし、加賀レンコンも東京で手に入るのであれば選んで食べたいと思います。
私の好みとしてはレンコンの味をダイレクトに感じられる“レンコンステーキ”。食感も良いし、すごくおいしかったです。
実際にあってもおかしくない話ですよね。ただ、私自身が何も知らないからこそなのかもしれないですけど、畑仕事イコール体力仕事、男性の仕事というイメージがあまりないんです。確かにご夫婦で農業を営んでいる方たちはたくさんいらっしゃいますけど、もし奥さんが畑仕事に興味がなかったら、それはそれで地域の人たちと協力し合いながら続ける方法もあるんじゃないかなと。もちろん、好きな人には自分の仕事を理解してほしいですし、好きな人の仕事だから理解したい。いろいろな選択肢がある中でお互いに何を思い、何を感じるのか。本当に難しい選択だと思います。
「こうなったらいいじゃない」って、なかなか言えないですよね。すごく大きな責任を負うことになるわけですから。でも、神野はそれができちゃう人。前作でも兄弟ゲンカに口をはさんでいましたよね(笑)。知り合ったら放っておけないタイプ。神野はとても真っすぐな女性だなと思います。
野菜をはじめ、食べ物を作るってすごくハードルが高いですよね。私も家でシソやバジルを作りたいなと思ったんですけど、上手くいきませんでした。でも、作品の中でもそうでしたけど、農業に興味がある人たちが集まって先輩たちのアドバイスを受けながら作業している姿はとても楽しそう。女性も楽しめるお仕事の一つなんじゃないかなと思います。
女性の視点がたくさん詰まっていてかわいらしいですよね。ただ、私は形から入るタイプなので“THE農業”という王道の作業着が好きです。何となく仕事ができる感じがするじゃないですか(笑)。
辛いものが食べられるようになりました。30歳ぐらいまで全然ダメだったんです。お寿司もサビ抜きで、からしも苦手。それが、ある時に海外で辛い料理しか食べられない状況になったんです。日本料理店がないところだったので。その時に唯一食べられたのがオクラのペペロンチーノ炒めのような料理だったんです。オクラは日本で食べ慣れていたので、これだったらイケるかなと思って挑戦してみたら意外と大丈夫だったんです。もうそれしか食べるものがないという極限状態だったのがよかったのかもしれません(笑)。それから、辛い物も平気になりました。
私はしょっぱい食べ物が好きで、子どもの頃から塩辛やからすみを食べていました。
貝が好きなので、つぶ貝やサザエ。コリコリ系の貝をお刺身で食べたいです。
お寿司になるとまた別(笑)。アジや鯛の昆布じめがいいですね。
映画を見て金沢に行ってみたい、レンコンを食べてみたいと思ってもらえたら、金沢の方々にご協力いただいた恩返しになるのかなと。農業が抱えている問題や食べ物を作るという仕事の面白さ、さまざまな人間関係などがきちんと描かれているストーリーも楽しんで見ていただけたらと思います。
撮影:島村緑/取材・文:小池貴之