大河ドラマ『鎌倉殿の13人』脚本:三谷幸喜さんインタビュー

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』 脚本:三谷幸喜さんインタビュー

2022.7.30
三谷幸喜

二代目“鎌倉殿” となった源頼家を支える御家人たちの権力争いがついに始まった『鎌倉殿の13人』。脚本を務めるのは2004年の『新選組!』、2016年の『真田丸』に続き3作目の大河ドラマ執筆となる三谷幸喜さんです。物語が後半に向かうにあたり、改めて作品や登場人物への思い、そして、今後の展開についてお聞きしました。

鎌倉殿の13人

©NHK

――平安末期から鎌倉時代前期を描くおもしろさはどのようなところにありますか?

書いてみて思ったのは戦国や幕末とはまったく違う世界だということです。一番大きいのは神話性や物語性があるということ。あの時代の人たちは神様をとても身近に感じていて、源頼朝もとても信仰心があつい。実際に神頼みや予言、呪いや夢のお告げに縛られていた人たちなので、書いていてとてもおもしろいです。ある意味なんでもありですが、その分、人間の本来持っている根っこの部分をすごくストレートに表現できる気がします。そのなかで北条義時は、実はもっともドライで現実的な人物なのではないでしょうか。なんでもありの混沌とした時代のなかでひとりだけリアリストがいたみたいな、そんなイメージです。義時を主人公にしたのは正解だったと思います。

――義時を演じる小栗旬さんの印象を教えてください。

僕は小栗さんの持っている俳優の力を以前からすごく感じていました。僕が脚本と監督を務めた映画に出演していただいたときに、僕が脚本を書いた「やってほしいこと」を的確に演じてくださったので、小栗さんは僕と共通言語を持っている人だなという印象を受けました。今回、僕は演出に関わっていないのですが、小栗さんの芝居を拝見していると、こうやってほしい、こういう言い方をしてほしいと僕が脚本に込めたものをきちんと受け取って演じてくださっているのでとても満足しています。前半も素晴らしかったのですが、これから年齢を重ねていく後半の義時は、前半以上に小栗さんの良さが出てくる気がしています。僕の勝手な思いですが、『鎌倉殿の13人』は小栗さんの新しい代表作になるのではないかと確信しています。

鎌倉殿の13人

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――これまで書いていて手ごたえを感じたシーンはありますか?

源義経の最期ですね。菅田将暉さんが演じることを前提に書いた義経像ですが、僕はこの義経が自ら命を絶つ瞬間を見たくなかったんです。できれば最期のシーンは笑っていてほしいと思いましたし、見ている方に想像していただきたかったので、笑う義経から逆算して書きました。僕のイメージしている義経でしたし、これ以上ない幕の引き方だったのではないかと思います。

――では、三谷さんの想像以上に成長したと思う登場人物はいますか?

自分の意図を超えて成長したのは善児ですね。ある程度は計算内ではあったのですが、こんなにみんなに愛される…、愛されてないのかな(笑)、嫌われているのかもしれないですけど、すごく皆さんの心に残るキャラクターになるとは思っていませんでした。それは演じている梶原善さんと演出の力だと思います。ここまで成長した善児がどんな退場の仕方をしたら視聴者の皆さんは満足するのだろうかというのを踏まえて彼の退場シーンを書いています。あとは義時と政子の妹の実衣ですね。実衣も宮澤エマさんが演じたことで最初の考えと大きく変わりました。当初は政子の話し相手として、茶々を入れるだけの存在のつもりでしたが、いろいろな資料を調べたり、宮澤さんが演じる姿を見て、それだけではもったいないと思うようになりました。実衣はもっと成長していくべき人物だと思うし、そんな姿が見てみたいと思いました。

鎌倉殿の13人

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――今後は政子の活躍も描かれていくと思います。

僕は北条政子が悪女として名前が知れ渡っていることが不思議なんです。これが織田信長だったら、いろいろ言われてもわかるのですが、政子は悪女と言われるようなことをしていない気がするんです。実際に物語を書いていてわかったのは、彼女は妻として母としてやるべきことをやっているだけなのに、事態がどんどん悪くなっていってしまうということ。逆に、悪女ではなく、悲劇の主人公のような気がしています。小池(栄子)さんもそのような気持ちで演じてくださっているのではないでしょうか。政子はとても真摯な女性だと思いますし、彼女の生涯を描くことができる喜びを感じています。

鎌倉殿の13人

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――1979年の大河ドラマ『草燃える』では三浦義村がいわば黒幕でしたが、本作での義村をどのように描いていくのか気になります。

三浦義村は本当に不思議な人でどの局面においてもなにを考えているのかよくわからないんです。そのおもしろさをまず生かしたいと思ったのと、『新選組!』では土方歳三、『真田丸』では石田三成を演じていただいた山本耕史さんに、掴みどころのない、でもなんだかわからないけどかっこいい三浦義村をぜひ演じてもらいたいと思いました。歴史を知っている方ならご存じだと思いますが、義村は最後の最後に暗躍します。そしてせっかく山本さんに演じてもらうのだから、そこに義村の最大の見せ場を用意するつもりです。まだ言えませんが、物語の終盤、ラスボス的な存在で主人公に立ちはだかるのはこの男かもしれません。

鎌倉殿の13人

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――三谷さんにとって初めて勝者を描く大河ドラマですが、最終回の構想は見えているのでしょうか。

主人公の人生が終わるとき、息を引き取った瞬間にドラマが終わるというのが僕にとって理想の大河ドラマです。大河ドラマを書くときにそれは自分のなかで決めています。実際、今までの2作品はそうでした。今回その理想の通りになるかどうかわからないですが、今いえることはそれくらいです。

――ありがとうございました。

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